public_art of Y0KOHAMAPORTSIDE

2010年10月、ヨコハマポートサイド地区に「宮川香山 眞葛ミュージアム」がオープンしました。
かつては世界を驚愕させ、第二次大戦の混乱の中で幻の陶磁器となった
ヨコハマ・オリジナルの陶磁器「眞葛焼」を紹介するミュージアムのオープンは
「アート&デザインの街づくり」を目指すヨコハマポートサイド地区にとっても、とても喜ばしい、大きな出来事でした。

一方、ヨコハマポートサイド地区には、たくさんのパブリック・アート作品が設置されています。
通常、パブリック・アート作品は、街路やショッピング・モールなどの商業施設など、人目に触れやすい空間にこそ設置されます。
しかし、ヨコハマポートサイド地区では、あえて、セミ・パブリックなマンション・エントランスなどの空間にも
パブリック・アート作品が設置されています。より多くの方に公開するという目的からは限定的なものになりますが
多くの人々が「住まう街」でもあるヨコハマポートサイド地区にとっては、それは重要な試みだったともいえます。


宮川香山 眞葛ミュージアム


gallery_kani.jpg開港当時から、わが国を代表する貿易港であった横浜港近くには、当時、さまざまなジャンルの名工たちが集まっていました。その中でも眞葛焼(まくずやき/陶磁器)は出色のもので、この窯を開いた宮川香山(初代)は、当時、欧米で開催されていた万国博覧会にたびたび作品を出品し、その度に好評を得て受賞作を連発、欧米の専門家たちを驚愕させていました。

彼が横浜に窯を開いたのが明治3年、彼が銅牌を受賞したフィラデルフィア万博が開催されたのが明治9年。金牌を受賞したパリ万博が開催されたのが明治11年ですから、横浜で作陶をはじめてわずか数年で国際的な地位を確立していたことになります。その後、初代香山は、明治29(1896)年には、今でいう人間国宝にあたるプライム“帝室技芸員”に選任されるなど、押しも押されもせぬ、わが国を代表する名工として歴史に記憶される存在になっていきます。
しかしながら、横浜大空襲にて工房は焼失。香山の名跡を継承していた三代目も家族、スタッフともに亡くなるという不運に遭い、眞葛焼は「幻のやきもの」になっていきます。

写真は 初代宮川香山作「磁製蟹細工花瓶(一対)」


L1020938_1.jpg2010年10月、ヨコハマポートサイド地区に、山本博士さんによるわが国でも有数の眞葛焼コレクションが展示されている「宮川香山 眞葛ミュージアム」が開館しました。初代の作品を中心に、当時のヨーロッパを驚かせた日本の技芸をまじかに体感することができます。



■ 宮川香山 眞葛ミュージアム

□ 土曜日、日曜日のみ開館 (年末年始など休館日あり)
□ 開館時間  午前10時〜午後4時まで
  尚、平日でも4名様以上でご来館をご希望の場合は、4日前までにご相談ください。
  臨時開館できる場合もございます。
□ 入館料 大人 500円/中・高校生 200円/小学生以下 無料
□ 場 所 神奈川区栄町6−1 ヨコハマポートサイド ロア参番館1階−2
□ 電 話 045(534)6853   
□ 管理・運営 株式会社 三陽物産



エドガー・ホーネットシュレイガー 「シューベルク・プロジェクト」


15-2-02.jpg石膏ボードにひとの足形を残し、そこに蜜蝋が流し込んである、ほぼ正方形のプレートを連続させ、壁一面に貼付けた作品。ロア壱番館1階のロビーに展示してあります。

ロア壱番館のロビーに設置されることを前提に制作された作品で、足形は,当時、開発に携わった人々、この地区に開発以前から暮らしてきたみなさんなどのもの。すべてがリニューアルされていく再開発事業の中で、過去と現在とを結ぶ「記憶」を未来に伝え、残す…

しかも、それを過度に主張するのではなく
日常の時間の流れのなかでさりげなくそうすることを目指したやさしい作品です。

syu_b.jpg




現在、一般には公開されておりません。


エットーレ・ソットサス 「THE FAMILY」


Photo 26 of 38.jpg世界的に知られる建築家であり、インダストリアル・デザイナーであるエットーレ・ソットサス氏は、モニュメントをつくるということに懐疑的であったし、またファイン・アートには一定の距離を保って活動してきたといいます。
それ故、このモニュメントの依頼を受けたとき「正直にいって戸惑った」と、後の取材にそう応えています。

彼は、機能のない単なる飾りではない作品をつくりたいと発想し、建築物や都市を考えるための「道具」として、このモニュメントを構想したといいます。

そして、彼は、建築物に使用されるのと同じ素材を用いること、また、大きな都市の空間の中に、まるで子どもが積んだ積み木が、そのまま放置されたようなフォルムをつくり出すことなどから、その道具としての命を吹き込もうとしたようです。

氏は、作品の設置にあたって「この作品の中からユーモアのセンスを感じ取ってほしい。テクノロジーの粋を集めた巨大な建造物群の中で、このモニュメントから、誰もがノスタルジアを持つ、どこか懐かしい『家族とともにあった少年時代』を感じてもらえれば」と語っています。

E-2街区の広場に設置されています。


マイケル・グレイブス 「THE WINDOW」


IDC.jpgアメリカを代表する建築家のひとりであり、インテリア、プロダクト・デザインだけでなく、グラフィックにも多くの作品を残すマイケル・グレイブス氏。氏の描かれた高さ28m、幅19mほどの大きなドゥローイング作品が、ソフトバンクIDC横浜データセンターの建物壁面に掲げられています(設置当時、この建物はIDC横浜国際通信センター)。
これは、氏の作品を1500枚ほどのパーツに精密に分割し、それを忠実に(1500枚の)タイルに焼き込んだもので、1枚のタイルは60cm×60cmほどの大きさになります。


11-1-01.jpgポストモダン絶頂期の代表的な作品とされるポートランド・ビル(オレゴン州/アメりカ)やディズニー本社ビルなど彼の建築作品は、高く評価され、クリントン大統領時代には、芸術栄誉賞を授与されています。ヨコハマポートサイド地区D-2街区「アルテ横浜」(UR都市機構)は、マイケル・グレイブス氏のデザインによるものです。
氏は、建物のカラーについて「ブルー・グリーンの色彩は、この建築物に日本の多くの現代建築とは異なる生き生きとした表情を与え、その立地であるウォーターフロントを象徴的に表現した」と語っています。

アルテ横浜や壁面ドゥローイング作品「THE WINDOW」には、氏がヨコハマポートサイド地区という再開発事業に描いていたイメージが象徴されているようです。


岡本敦生「地殻から」


L1000871.JPG現在もランドマークタワーには「ドックヤードガーデン」として、旧三菱重工横浜船渠第2号ドックが復元保存されています。しかし,石造りのドックはこれだけでなく、残念ながら解体されたものもありました。

この作品は、そのとき解体されたドックから出た石材でつくられたもの。ギャラリーロード沿いを中心にボラード(車止め)としての役割も果たしています。

この石材は明治30年代に伊豆半島から切り出されたもの(新小松石)で、全て手彫りで加工されたものでした。岡本氏は、そうした先人たちの足跡を残すため、あえて旧来の加工面を残し、ご自身の表現と調和させた計画を提案されました。

また、ギャラリーロード沿いにあるこの作品群と、横浜クリエーションスクエア脇にある「金港公園」、ザ・ヨコハマタワーズ中央にある広場に設置された作品「dockyard -記憶体積」は、いずれも、岡本敦生氏が、同じ三菱重工ドックの旧材を用いてつくられた作品です。

近代化とともに、横浜港で時を刻み付けてきた石材が、この街で,舗道に設置されていたり、あるいは公園になっていたり、様々な形で人々の生活と触れ合いながら、また新しい時を刻んでいく…
自然に風化していくことも含め、設置されたときに作品が完成するのではなく、それ以後の時間と共鳴しあいながら成長していく作品であること…

作品は、ヨコハマポートサイド地区の歴史とともに時を刻み続けます。

(岡本敦生プロデュース作品)

L100087500.jpg地殻からL1010105.JPG金港公園L1010299.JPGdockyard-記憶体積

  ↑ 写真をクリックしていただくと拡大表示されます。


ザ・ヨコハマタワーズ パブリック・アート作品群


ザ・ヨコハマタワーズには、この建物の開発にあたったヨコハマポートサイドF-1街区再開発組合により、この街の開発コンセプトである「アート&デザインの街づくり」に基づき、数多くのパブリック・アート作品の設置が計画されました。
現在、6名の作家による10作品が展示されています。

「dockyard -記憶体積」 岡本敦生/「梳る時間 -君の頬をなぜる風-」 高田洋一
「風の道」 AZUMI/「まるい言葉」 畠山耕治
「Marrakesh」「design supermarket」 ステファノ・ジョバンノーニ
「SOLFEGGIO」「Bird out of cage」
「Couple&Dog」「Egg of the world」 以上の4作品 ナディム・カラム

L1010299a.JPG

写真上部5点のうち左上はAZUMI作「風の道」(写真は部分)。左下は畠山耕治作「まるい言葉」。中央はナディム・カラム作「Egg of the world」、右上はやはりナディム・カラム作「Couple&Dog」(部分)。右下は高田洋一作「梳る時間 ー君の頬をなぜる風ー」 です。

また、下段、横長の写真は岡本敦生作「dockyard -記憶体積」(部分)です。
→ この写真は、クリックしていただくと拡大されます。

※一般に鑑賞可能な場所に設置されている作品もありますが、あくまでも、その全てが「住宅の庭」ともいえる部分に設置されているものです。鑑賞の際には、その点、充分にご配慮いただけますよう、お願いします。